広大な十勝平野の一角、帯広の西隣に位置する芽室(めむろ)町。
日高山脈を南西に望み、どこまでも平坦な大地に、小麦、ばれいしょ、豆類、ビート、スイートコーンなどの畑が見渡す限りに広がる農業の町です。この町で小麦などの栽培を行う農業者6軒で構成される「美生(びせい)小麦生産組合」では、「YES!Clean」認定の小麦を生産しています。
現在、小麦で「YES!Clean」認定を受けている生産者は、ここ美生小麦生産組合と、三笠市・いわみざわ小麦生産集団キタノカオリグループの2団体だけです。
「YES!Clean」は、北海道クリーン農業推進協議会が審査・登録する制度。
北海道全体で取り組んでいるクリーン農業を土台に、農薬や化学肥料の使用を削減して生産することを目的に、道立農業試験場などにより開発・改良されたクリーン農業技術を導入して生産された、よりクリーンな「北のクリーン農産物表示」制度のことです。
この制度で規定されている各種条件に適合しているものだけが、「YES!Clean」の表示ができます。
◎「YES!Clean」の詳細はこちら → http://www.yesclean.jp/
「美生小麦生産組合は、芽室自然農法生産組合、有機小麦生産組合を経て現在に至っています。輪作をせずに無農薬・無化学肥料の小麦栽培に取り組んだ時期もありましたが、生育不良や病害虫による被害などが相次ぎ断念。輪作体系を基本にしながら土づくりや栽培方法の工夫に積極的に取り組み、必要最低限の農薬と化学肥料の使用にとどめる農法へとシフトしました。小麦は本当にデリケートで、あらゆる面で不安定要素の多い作物なのです。組合員も当初は30軒くらいありましたが、いまはわたしたち6軒で力をあわせてYES!cleanの小麦を生産しています」と組合長の飛田秀樹さん。
同組合が一貫して目指しているのは、品質・安全性・収益性のより高い小麦を生産すること。
しかし国内の小麦事情は、収量を犠牲にして農薬や化学肥料の使用料を抑えても、生産者にとってそれに見合う収益を得るのはなかなか難しいのが現状です。
「YES!cleanの規定に沿って農薬や化学肥料の使用を抑えるということは、それだけ生産性のリスクが高まるということ。収量は慣行栽培の1割減くらいを覚悟しなければいけません。場合によっては、極端に収量の低い年もあり得ます」と語るのは、副組合長の松永敏男さん。
そんな課題を抱えながらも、よりよい食の生産に取り組む同組合と志を同じに、パートナーシップの関係を構築しているのが横山製粉です。
平成19(2007)年度よりYES!cleanに認定されている同組合の秋まき小麦(きたほなみ)はすべて、横山製粉が買い取り契約をしています。
「消費者が生産者の顔の見える農産物を求めているのは確かです。いろいろ苦労も多いけれど、俺たちみんな、しっかり足並みを揃えて頑張るから、横山製粉さん、頼むね!」との飛田組合長の言葉に、
「皆さんの想いをしっかりカタチにしていきます!北海道産小麦全体のためにも、美生小麦生産組合のYES!clean小麦を、しっかりアピールしていきます!」と横山製粉営業部業務グループの高橋恒リーダー。
北海道産小麦の価値向上へ。
農業生産者と製粉会社ががっちりとスクラムを組んで取り組む実際を目の当たりにして、北海道産小麦のさらなる可能性を実感しました。
ますます楽しみです!北海道の小麦。
取材/2014年2月18日
文/宿田牧夫